緑内障は、40歳以上の日本人で5%が罹患している疾患であり、本邦の中途失明原因の第1位です。緑内障は、かつては青そこひとも呼ばれ「高齢者が失明するまれな疾患」と考えられてきました。しかし近年では、発症早期・軽症の緑内障を含めると非常に頻度の高い疾患であることがわかっており、誰でもなりうる慢性進行性疾患であります。
下記に緑内障診療の流れを説明します。
緑内障は、多くの場合に病期が中期以上に進むまで症状がないため、早期では9割以上が未治療と言われております。早期で診断される場合は、健診・人間ドックでの指摘、もしくはたまたま眼科を受診したときに発見されることが多いとされています。当院では、緑内障が疑われる方に、眼圧検査・眼底検査・FDT(簡易視野検査)・光干渉断層計黄斑マップ(重要部分の網膜厚)などの検査を行い、スクリーニングをしています。(受診患者全員に緑内障スクリーニングを行っているわけではないため、検査希望のときには問診・受付にお伝え下さい。)
スクリーニング検査で緑内障の可能性がある方には静的視野検査を行います。隅角鏡検査・動的視野検査などを追加で行う場合があります。日本人の緑内障患者のおよそ9割が正常眼圧緑内障であることがわかっており、各種検査の結果から総合的に緑内障の有無を診断します。
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初期(MD -3 dB)
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中期(MD -10 dB)
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進行期(MD -25 dB)
緑内障が発症するしくみはまだわかっていません。視神経が年齢よりも早く障害される病気であることは、わかっています。原因で最も多いものは加齢と近視です。緑内障は40歳代の3%、70歳代の10%に存在するとされており、加齢で頻度が増していきます。また、近視を有すると頻度が2~3倍程度に上昇するとされており、とくに、強度近視(-8D以上)ではかなりの頻度で発症します。加齢・近視などの要因による緑内障は原発緑内障と呼ばれます。
上記以外では、若年者のステロイド使用・外傷・先天性の隅角異常・ぶどう膜炎などに伴っておこります。高齢者では、進行した白内障、糖尿病、眼動脈閉塞(頸動脈閉塞)などに伴っておこります。他の疾患に伴って緑内障を発症した場合には、続発緑内障と呼ばれ原因疾患の治療が優先されます。
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緑内障は視神経がゆっくりと障害される疾患
現在、緑内障に対して科学的根拠のある有効な治療は眼圧下降療法だけです。眼圧は正常範囲が10~21mmHgとされており、治療目標としては、正常眼圧でかつ各個人の基準眼圧から30%下降を目指します(正常眼圧緑内障で発症時に眼圧が18mmHgであれば、目標眼圧は13mmHg以下)。
原発緑内障もしくは原因治療を行った続発緑内障には、まず点眼による眼圧下降療法を行います。治療効果の判定は眼圧検査と視野検査を用いて行います。点眼最大量での治療でも視野障害の進行が止められない場合には、レーザー治療・手術の適応となります。
日本人の原発緑内障の9割は、正常眼圧緑内障とされています。その進行は多くの場合緩やかで、患者によっては20年以上かけて進行します。緑内障の治療目標は、40代で発症した緑内障患者の視機能を70代・80代になっても保つことです。そのため、緑内障の通院・治療は長期にわたります。緑内障治療の問題点は、治療によって治癒・改善する疾患ではないため、治療を中断してしまう事がしばしばあります。
緑内障は、変わらない事が良い事・毎日点眼していた方と未治療で10年後、20年後に大きな差が出る疾患であることをご理解頂くことが重要です。
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上図では、40歳で早期緑内障(静的視野での視野障害MD-4.0dB)の患者が、年間-2.0dB進行すると53歳で末期緑内障(視野障害MD-30.0dB)になります。点眼治療などで、年間-0.6dBの進行に抑えられれば、70歳で視野障害MD-20dB程度になります。緑内障の治療目標は視野障害の進行を、治療によっておさえる事にあります。